電子部品メーカーK社開発部

コールドチェーンを支える、低温稼働センサータグの電源問題を解決マイナス20度以下でも安定して稼働させるために課題が山積みで…

背景

新型コロナウイルス感染症の流行が長期化し、ワクチンの開発や普及が進む中、ワクチンを安全に輸送する欠かせない手段として、コールドチェーン(低温輸送網)に注目が集まっている。そのような状況を受け、電子部品メーカーのK社はコールドチェーン向けセンサータグのユニット開発を得意先から依頼され、情報収集に追われていた。

※医薬品や食品など一定の温度管理が必要な商品を、生産や輸送、消費まで、適正な温度(低温、冷蔵、冷凍)の状態で一貫して流通させるシステムのこと。ワクチン以外にも食品・飲料や化学薬品、医薬品などの輸送で重要な役割を担っている

課題

一次電池では低温状態での動作が不安定

K社はこれまでセンサータグを開発したことはありましたが、コールドチェーン向けは初めてでした。コールドチェーンでは、製品温度を測定するセンサーデバイスがマイナス20度以下になる低温状態でも、リアルタイムの温度データ収集・無線通信によるデータ送信を安定して行う必要があります。
しかし、何度試作を重ねても、低温状態では電池の減りが早く、通信に必要な電流を安定して流せないため、評価したどの一次電池も実用化にはほど遠いものばかりでした。電池の減りが早く、安定な通信ができないと肝心の温度モニタリングの情報伝達や異常時のアラート警告などが機能しません。開発部は低温でも動作を安定させる方法を模索し続けました。

大型の一次電池では、センサーユニットの小型・薄型化は難しく…

課題は電源だけではありません。センサーユニットのサイズも、早急な解決が必要でした。コールドチェーンではさまざまな大きさの低温コンテナを使うことが多いため、得意先は小型・薄型のセンサーユニットを希望していました。しかし、電池の持ちを少しでも良くするためには、大型の一次電池を使用するしか方法がなく、小型・薄型化はとても難しい状況でした。
二次電池も検討しましたが、充電・給電のための回路設計が必要な上に、専用のICが必要になるなど、センサーユニットのサイズにも影響が出てしまうことが判明。得意先のニーズを満足する製品コンセプトが固めることができず、開発部メンバーは頭を悩ませていました。

課題のポイント

  • コールドチェーン向けセンサータグの電源は低温状態では電池の減りが早く、通信に必要な電力が安定して流せず、どの一次電池も実用化にはほど遠い

  • 電源容量を確保するためには大型の一次電池を使用するしか方法がなく、小型・薄型のセンサーユニットが実現できない

12